今回は先日実施された神奈川県公立高等学校入学者選抜共通選抜の数学問題の分析です。全体の大問構成としては大きな変化は見られませんでした。大問数6、小問数25と例年通りでした。それでは、各問いごとに見ていきます。
問1、問2は小問集合で、基本的な計算問題や因数分解、2次方程式の計算といった各分野の基本問題で構成されていました。計35点分の配点ですが、ここではすべて得点しておきたいところです。
問3は思考力が試される問題です。(ア)は、三角形の相似の証明と角の大きさ、(イ)では初めて箱ひげ図が出題されました。昨年の受験生には「今回は必ず箱ひげ図が出るから」と言っておきながら出題されませんでしたが、今年はようやくの出題となりました。選択肢の中で正しい内容が幾つあるのか記されてないので、資料をしっかり分析する力が必要となります。(ウ)は小学生で出題されるような速さとグラフの問題でした。Bさんの速さが求まれば問題ないものでした。(エ)は三角形の相似を利用する面積比の問題でした。問題慣れしていないと見た目では1組の相似な三角形しかないので行き詰まってしまった受験生も少なくなかったかもしれません。この問題での全体の正答率は低かったと予想でき、最初の山場だったと思われます。
問4は関数の問題でした。今回もそれほどグラフが入り組んでいなかったので、(ア)(イ)は解きやすかったと思います。(ウ)は点Gの座標を文字式で表し、それを元に2つの三角形の面積を表して、方程式を解かなければいけません。「平行線を利用して」といういつものお決まりのパターンでは解けなかったので、かなり正答率は低かったのではないかと思います。恐らく、今回の内容の中で一番の難問だったと考えられます。
問5は確率の問題でした。大、小2つのさいころを振って直方体のブロックを決められた場所に移動させるものです。ブロックの移動方法がしっかり理解できていれば、内容的には易しいものだったのではないでしょうか。(イ)では、ゾロ目が出たときは場所Qが空き、大小どちらかのさいころに6の目が出たとき、場所Pと場所Qの2ヶ所が空くということは分かりやすかったと思われます。
問6は円錐を利用した三平方の定理の応用問題でした。(ア)の円錐の表面積、(イ)のDE間の距離を求める問題は平易なものでした。(ウ)は例年よく出題される立体の表面上を通る線の最短距離を求める問題でした。ここ数年は最終問題で受験生の心を折るようなレベルの問題が出題されていました。昨年度は全体の正答率が2.7%、3年前は0.5%と、
どうしてこんな難しい問題を出題するのだろうと思っていましたが、それと比べれば今回の問題は解きやすい方の部類に入るものだったと思います。それでも、扇形全体の中心角144°の6分の5に当たる120°がしっかり使えたかどうかがポイントになったと思います。
総括として、全体のレベルを考えますと昨年より平均点は若干上がるのではないかと思われます。問3で出題される思考力が問われる様々なパターンの問題は多くの問題に触れ、経験を積んでおかないといけません。ここで時間を掛けすぎてしまうと後半の問題に十分な時間を残すことができなくなってしまいます。頻出問題である資料の整理、確率、関数の応用、三角形の相似を絡めた比、円の性質を利用した証明問題など幅広い知識が必要となり、手際よく処理するスピードが求められます。日頃から多くの問題に触れ、初見の問題を潰しておけば、入試ではその経験から問題を解く糸口を見つけることができると思います。
これから受験を迎える中2、中1の生徒諸君は、日頃から問題としっかり向き合い、粘り強く考え抜くことを心掛けてもらいたいと思います。そのように取り組めば、きっと数学の実力をつけていくことができると思います。是非、頑張ってもらいたいと思います。(二宮)