先日テレビを見ていたら養老孟司さんが出演されていました。その著書である「バカの壁」は一世を風靡しましたが、受験材料としては「解剖学教室へようこそ」がよく使われていました。養老さんのエッセイは少々辛口で揺らがない自信に溢れていて私なんぞが読むときは背筋を伸ばして読まなくていけないような気がしてしまうものです。

 さて、途中から視聴したので詳しくはわかりませんが、そのテレビ番組では小学生からの質問に養老さんが答えるような形式のものでした。質問内容は「どうすれば良い人生を送ることができますか?」というようなものでした。たしかに誰でも悪い人生を送るよりも良い人生を送りたいものです。この質問の難しさは良い人生という曖昧な定義にあります。何を持って良い、悪いとするのか、それは個人の判断に委ねられているところです。それともう一つは人生とはその人が生まれてから死ぬまでを指すものです。つまり死んでみないと分からないということです。そもそも死んでからそのような判断下す精神的なものが存在しているのかわかりません。また、死んだ人にそれを尋ね回答を求めることも出来ません。

 私として大変興味深い質問でした。養老さんの回答は端的に言うと上記のようなことを断ったうえで、限られた時間の中で自分が何かに夢中になれる時間がどれだけあるかということではないかとおしゃっていました。何かとは何か、実際に養老さんは趣味の昆虫や読書を紹介されていました。生きるために必要な仕事以外に好きで夢中になれる事があるということが良い人生への一歩なのではといことなのでしょう。もちろん養老さんの回答を待つまでもなく、それが理想的な生き方であると誰もが考えることかもしれませんが、改めて重鎮からの回答を聞くと腑に落ちるものです。(吉川)