問題構成は大問が8問。そのうち4問が各分野ごとの雑問形式で配点が36点。後半の4問が、各分野から実験や観察およびその考察に関する問題となっていて、ここ数年変わらない構成となりました。前半の雑問形式の出題の中にも、実験やその考察についての問題が多く出題されました。受験生にとっては難しく感じたことと思います。また、出題のすべてが選択肢の番号を選ばせる問題となり、短文記述や作図、用語を書かせる問題、計算結果を数値で答える問題は見られませんでした。つまり、すべての問題がマークシートを塗りつぶす解答方式でした。
問1は物理分野から、音の性質について、垂直に投げ上げた物体のエネルギーの変化について、回路図とグラフから抵抗器の電気抵抗を計算する問題が出題されました。問2は化学分野で、状態変化に伴う体積変化の理由を選ばせる問題、質量保存の法則について実験結果から発生した気体の質量を表す式を選ばせる問題、メタンの燃焼についてのモデルと化学反応式を参考にプロパンの燃焼の化学反応式を完成させる問題が出題されました。問3は生物分野から、細胞分裂の5つの図の正しい順番を選ぶ問題、光合成の実験とその考察についての問題、食物連鎖における2種の生物の個体数の変化について正しい考察を選ばせる問題が出題されています。問4は地学分野で、乾球・湿球温度計の誤った使い方をしたときの示度について、天気図から風向の変化を読み取らせる問題、地層の模式図から化石の名称と変動の正しい順番の組み合わせを選ばせる問題が出題されました。
問5は凸レンズによる像についての問題でした。与えられた図やグラフを読み取る力が問われています。また、レンズを挟んで物体とスクリーンが左右対称の位置になるとき、物体とレンズとの距離が焦点距離の2倍であるということを覚えていなければ正答にはたどり着けないと思います。さらに、先生と生徒の会話の形式で、虚像についての考察がされていて、虚像が見えるときの作図をしたことがなければ、これも難しかったかもしれません。
問6は金属のイオン化傾向についての問題で、新学習指導要領で新しく導入された内容です。SHOSHINのテスト&チェックを受講した生徒は、ほぼ同じ内容の問題を練習したことを思い出してくれたと思います。この問題でも最後は先生と生徒の会話の空欄に当てはまるものを選ばせる問題で、普通に原理や考察を答えるよりも、会話文を読むことに時間がかかるように作られています。
問7の生物の問題が、今年のエピックと言えるかもしれません。内容は消化酵素の働きについての実験なのですが、題材は胃腸薬と脱脂粉乳を使ったもので、直接問題の内容には影響がないように説明されてはいるものの、聞いたことのないものの名前に動揺した生徒も少なくなかったと思います。この分野では珍しく計算問題が含まれていて、実験結果のグラフから、加えた酵素液の量とにごりの度合いが0になるまでの時間が反比例していることに気がつくかが鍵となりました。また、最後の小問は生徒の仮説を確かめるための実験とその結果を選択肢から選ばせる問題で、細かな数字を含んだ長い文章を吟味しながら読み取らなくてはならない問題でした。
問8は天体の動きに関する問題で、北極星と北斗七星の動き方、見える高度についての比較的平易な問題でした。日周運動と年周運動をしっかりと区別して考えることが必要です。
全体として、今年の入試は昨年度と同様に難化の傾向が否めません。解答方式がすべて選択肢になったことは、解きやすくなったように思えるかもしれませんが、その分選択肢が複雑になっています。6択の問題も増えていますし、1つの問題の中に4択の問題が2つ組み合わされている問題(実質的には16択)も複数見られました。
昨年も書きましたが、入学者選抜のためのテストですからある程度の難易度を維持することは理解できます。しかし、昨年同様に今年の問題でも、出題内容が難しくなったというよりは、「素直じゃない」問題がここかしこに見られました。たとえば、乾球・湿球温度計の正しくない使い方をしたときにどうなるかを答えさせられたり、「シオカメウズムシ」などという聞いたことのないような生き物や、「胃腸薬と脱脂粉乳」というこれまた聞いたことのないような材料を使った実験を見て、「知らない、どうしよう?」と動揺した受験生は少なくなかったと思います。受験生は、正しい観察や操作について勉強してきているはずです。シオカメウズムシは「アメーバ」で、胃腸薬と脱脂粉乳は「だ液とデンプン」でも問題として成立するはずです。こうしたことは、前段の選択肢の複雑化と相まって、いたずらに受験生の集中力や持ち時間を削ることにつながり、正しい学力を検査することに少なからず悪影響をもたらすのではないかと懸念しています。(榎原)