授業をしていると「そんなことも知らないの?」とつい言いたくなる場面が多々あるのですが、それは年を追う毎に顕著になって来ています。記憶とは時間と共に風化していくものであるとよく形容されていますが、授業で感じるのは個人の記憶というよりも世代間の共通知識といったほうが良いかもしれません。同じような教育環境で育ってきたもの同士で共有できる雰囲気であったり、空気感といったものが有るはずです。それが世代を超えて共通認識できるものが以前にはもっと沢山あったような気がするのですが、今は希薄になりつつあるように思えます。
 グローバルとか多様性とか世の中の主流はまさにそこへ移項しつつあるようです。それに如何に対応できるようになるか、そこに教育の主眼はシフトしようとしているようです。タブレット貸与とか小学英語の取り組みはその一例として見て取れます。その事を考えてみれば、今の子どもたちと昔の子どもたちとの間の共通認識事項は減っていくのも当然の事と言えそうです。
 以上のような事から、冒頭の「そんなことも知らないの?」という教える側のつぶやきに対する今の子どもたちの回答は「はい、知りません。ですが、こんな事は知っています。」となるはずです。そう回答する今の子どもたちも、いつかは昔の子どもたちになっていくのであると思うと何とも不思議な感じがしてきます。  (吉川)