低学年の授業でよくある現象なのですが、講師側から生徒側の解答を誘導するために二、三のヒントを与えると、はっきりと解答を見つけていてもわざと間違えたり、その場を楽しくしようとあり得ない解答をするといった俗に言う「受け狙い」のようなことをする生徒がいます。この現象の考察としてポイントとなるのは、本当は正しい解答を得ているのに直接口にしないということです。中には全く考えようとせずその場しのぎに適当な解答を口にする生徒も稀にはいますが、与えたヒントの重さでそれは簡単に看破できます。それはそれで別の指導の仕方があるのでここでは割愛します。
分かっていて分からないふりをする生徒の心理とはどのようなものなのでしょう。単純に発言をしたくないとか恥ずかしいとか目立ちたくないとかといった事もあるのかもしれませんが、私としてはそこには自信の無さが大きく関わっているような気がします。半分以上は正答であると思ってはいても確信が持てない、だから解答をうやむやにしておく、そして答え合わせが終わった後に「やっぱりな」と自分が本当は正答を見つけていたということを声高に主張していくのです。
上記のことは何とも不毛な作業であるかのように映りますが、私としては意味のあるものと評価しています。「答えを変えなければ良かった」とか「最初はそう思った」とは言い訳言葉の常套句ですが、それが彼等の本心から出ている言葉であれば、結果としては誤答であっても正答の近辺に辿り着いていた可能性が感じられます。黙って模範解答を受け入れる生徒よりも大いに可能性を感じる生徒と言えるような気がします。(吉川)