ことわざや慣用句、故事成語などが好きで興味を持っている生徒は各学年に一人ぐらいはいたものでしたが、最近はそういったものに興味を示さない生徒がほとんどです。私立中学受験をする生徒はこれらを意図的に覚えるよう指導する機会がありますが、そうでない生徒たちはその機会を与えられることなく、公立の中学校へと進学をしていきます。中学校では故事成語を指導する単元があるにはありますが、資料集に載っている2,3ページのことわざや慣用句、故事成語を定期試験の試験範囲と紹介して終えているのが現状です。確かにことわざや慣用句、故事成語は普段の生活の中で必要とされるべき事項とは言えません。それを知らなければ生活をしていけないとか進学、就職に大きく関係しているものでもありません。小学生や中学生、高校生たちが友人との会話に日常用いるものでもありません。ですが、先人の知恵といえば大げさですが先人との共感と考えれば勇気づけられることもあります。悩み事を抱えていて誰にも相談ができないときや気分が塞ぎ込んでいるときなど、それらを見て、解決にはならずとも同じような心情・境遇にいた人がいて、こんな言葉を残したのかと思うと少し心が軽くなったりするような気がします。
 また、ことわざを知ることは日本の文化に触れることにもなります。「十日の菊、六日の菖蒲」はタイミングを逃してしまえば無駄になることを表していますが、菊が十日で菖蒲が六日であることを知れば、ことわざの意味以上の理解を得られます。九月九日は重陽の節句、菊の節句とも呼ばれるこの日は菊を飾る慣わしがあります。その九日を過ぎるとせっかっくの菊も台無しになってしまいます。端午の節句は五月五日で菖蒲の節句とも言い、この日は菖蒲の葉を湯船に浮かべたり、軒下に吊したりして邪気を払います。そんな日に菖蒲が手に入らなければ厄除けができません。といったようにそのことわざの成立の背景を知ればより深く理解が進みます。そこから興味の幅を広げていければことわざの意味以上の成果を得られるのではないでしょうか。(吉川)