猫とは不思議な生き物だとつくづく思います。人間との過剰なスキンシップは嫌うくせに、餌をもらうことやトイレを掃除してもらう際には足下に纏わり付いてくる。何とも打算的な生き物であるような気がします。犬であれば飼い主に対しての無償の愛を身体全体で表してくれますが、猫にはそれはありません。もちろんわが家の飼い猫だけの話かもしれませんが、スキンシップは専ら引っ掻くことと噛み付くことです。
引っ掻かれることや噛み付かれることは我々人間にとっては痛みを伴う不快なものであることを彼等は認知していません。彼等にしてみればそれはコミュニケーションの一環であって、仲間として認知していることの証なのでしょう。そう思うと無下には叱ることもできません。噛み付かれ、引っ掻かれ流血している腕で飼い猫のトイレを掃除し、餌を用意している自分が情けなくなることもあります。
そんな猫であっても私の後を追って来るのです。身体を接して来るわけではないのですが、私のいる半径二メートル以内には必ず入っているのです。お風呂に行けば入り口の前で、居間に入ればテレビの前で、寝室に行けば枕元や足下に陣取ります。猫にしてみれば私の事を気遣って行動を共にしてやっているような感があるのですが、私としても嫌な気持ちもしません。この付かず離れずの絶妙な距離感を猫は生きる術として身に着けているのかもしれません。(吉川)