学校の教科書のボリュームが薄くなった時期がありました。所謂、ゆとり教育と揶揄される時期のことです。その功罪で世界と比較しても理数科目を中心に実力差が広がった事実があります。それから暫くして教科書のボリュームは戻りましたが、算数や数学を教えている立場からすると、これらの教科を苦手とする児童・生徒の割合はゆとり教育以前と比較するとその割合は増えているように感じます。
 SHOSHINには、通常授業以外に質問室、定期補習、弱点克服道場があり、そこで質問を自由にすることができるので、私はこれらの場面で多くの質問の対応をすることになります。その中にはかなり基本的なことを聞いてくることも多いのです。もちろん、そのための質問室や補習なので質問すること自体悪くはないのですが、少し調べれば解けるのではないかとか、公式を確認して代入すれば答えがでるのではないかというものも含まれていることを考えると、もう少し自分で何とかしようという姿勢も必要かと思います。
 一方で、そもそも苦手科目だったりする訳ですから、その意識が強くなれば強くなるほど問題文が頭に入ってこなかったり、自分にとって文章題は無理だからと最初から考えることを諦めてしまったり、または、思考自体がストップしてしまっているのではないかという場面に出くわすこともあります。基本的には勉強不足だったり読解力の部分での欠落によるものが大きいように思われますが、中には根深いものも含まれており、そのような児童、生徒の対応は一筋縄ではいかないため、中々難しいものがあります。
 例えば、旅人算を例に考えてみましょう。どんな速さで進んでいるのか、進む方向は同じなのか違うのか、同時に出発しているのか時間差があるのか、最終的に問われていることは何なのか、速さの3公式のどれを使って解くのかなどが問題文に含まれていてそれを読み取らなければなりません。一つの問題を解くためには、このような様々な条件をしっかり確認しながら問題に取り組まなないと正答に辿り着くことはできません。しかし、その過程が多かったり、複雑だったり、またはそのように感じてしまったりするので、恐らく苦手意識が強まってしまうのでしょう。
 私が質問の対応をしていると、大抵は全く理解できていない訳ではないんだなと感じることの方が多いのです。ただ、一発で答えが出る場面は少ないので、多少の過程を経る必要があります。もし、つまずいている問題があるのなら、どの段階でつまずいているのかを確認し、最後まで辿り着くことができたら、それを繰り返し再現してみることで立て直すことができると思います。全く理解できていない訳ではありませんから、自信を持って粘り強く算数、数学に向き合ってくれることを願っています。
 デジタルトランスフォーメーションの波が押し寄せる昨今、今まで以上に算数や数学の力、論理的思考力が問われることは多くなることでしょう。日常を普通に過ごすためにも、そして社会に出てからも役立つであろう能力をこの時期から身に付けていくことが必要だと思います。(二宮