惜別

 数日前、我が家の家猫が息を引き取りました。私が学生の時に我が家にやって着た猫ですから、かれこれ二十数年生きたことになります。歳も歳であること、この夏の暑かったこともあって、早晩こんなことがあるのではと予感はしていたのですが、私が仕事から帰って来るとほぼ同時に息を引き取りました。ここ数日、歩くこともままならないような状態で食事も一切摂らず、真夜中に突然かすれるた声で鳴き出すようなこともありました。今思えばあれは何かを訴えていたのかもしれないと心が痛みます。
 猫は自分の死期を悟ると姿を隠すという話を聞いたことがありましたが、我が家の老病も息を引き取る前日、先にも書いたように歩くこともままならない状態なのにも関わらず、我が家から姿を消してしまいました。家人が揃って周辺を探しても見当たらなかったのですが、近所の方から「お宅の猫では」というお知らせをいただき、迎えに行くと路上に蹲っているその猫は紛れもなく我が家の猫でした。もはやその重みも感じないほど軽くなったその猫を抱きかかえたのが私と彼女との最後の接点となってしまいました。
 母がもはや息をしていないその猫に「家に来てくれて本当にありがとう。」と声を掛けているのを耳にして、初めて彼女の存在の大きさをつくづく感じてしまいました。彼女の冥福を心から祈りたいと思います。