「ようなゲーム」-1

 最近映画化された『沈黙』の作者として知られる遠藤周作氏の未発表原稿が死後46年ぶりに発見され、その文庫版が出たとのことで、早速読んでみました。ベストセラーだった狐狸庵先生シリーズを彷彿させるユーモアたっぷりのエッセイ集でした。
 メインテーマは「手紙の書き方」で、その主旨は「読む人の身になって書く」ことにあります。この主旨そのものは時代を超えた真理であり、まったくその通りであるとだれしもが認めるところであろうと思います。しかし、当時の遠藤氏が見たことも使ったこともなく、おそらくはその存在すらも予想できなかったであろう「スマホ」、「メール」が主流の現代にあって、どれだけの人が本書の内容を理解できるだろうかと、遠藤作品ファンの私としては、ちょっと気になります。なにしろ、映画館の入館料が大人200円、はがき1枚が5円の時代ですから。
 かく言う私も、今さらラブレターの書き方を学んだとて、将来の役に立ちそうもないので、途中から投げ出してしまいました。それでも、大変参考になったことがあります。それは、「ようなゲーム」のおすすめです。
 「ようなゲーム」とは、例えば「じいさんの頭は(   )のように光っていた。」とか、「空は(   )のような光をおびていた。」のように、(   )の中に入れる形容言葉を考えるゲームのことで、これは遠藤氏が作家になる前も、作家になってからもずうっと続けてきたゲーム=勉強だそうです。ただし、このゲームには二つの条件があります。ひとつは、誰にも使われているような慣用句は使用しない。もうひとつは、その名詞にぴったりする言葉であること。この二つです。つまり、正解のないオリジナルな言葉作りです。
 私も、このブログをはじめ文章を書く機会は結構あります。そしてその度にいつも頭を悩ませるのが、この「ような」を考えて作り出すことです。このことを日常の生活の中で常にゲーム感覚で考えることを遠藤氏はおすすめしているのです。この提言は私には目から鱗のような(これは慣用句であり、遠藤氏からは×の採点が下りますな)大発見でした。少なくとも私は小学校でも、中学校でも、国語の教師からこのような指導を受けたことはありませんでした。もっと早くこのゲームを知っていたらと、今さらながら悔やんでいます。
 生徒の皆さん、ぜひ今から「ようなゲーム」に取り組んでください。そうすれば、皆さんの作文力は驚くほど向上することでしょう。