受験生の母

 何年か前の話です。子どもの中学受験合格の報告に、泣きながらやってきたお母様がいました。どれだけお喜びであったか、その表情からも十分読み取れ、こちらももらい泣きしてしまったことでした。
 世間一般の評価からすれば、決してレベルが高いとは言えない学校です。でも、受験生とお母様にとっては、その学校が精一杯だったのです。学校ではいわゆる落ちこぼれで、そのことで友だちからいじめを受けていたこともあったそうです。そんなこともあって、また彼らと3年間同じ公立中学で一緒になることを避けての私立中学受験でした。
 スタートが遅かったこともあり、入室後も皆についていくことは困難でした。それでも少しずつ力をつけ、なんとか合格にたどり着くことができました。
 中学を受験しようとする動機はそれぞれの家庭によって異なります。何らかの事情から地元の公立中学を避けたい。高校受験を避けてのびのびとした6年間を過ごさせたい。面倒見の良い私学の校風の中で育てたい。他にも様々な思い入れがあり、各家庭では私学受験へと舵を切ります。一つだけ言えることは、大学合格実績の良さから私立中学に進ませ、有名大学に進ませることのみが私立中学受験の動機ではないということです。

 大手塾の受験実績広告を見ると、一流大学に多くの合格者を輩出させる中学や高校に何名合格させたかを競うように宣伝しています。底辺校の合格者はステーキの横に置かれたパセリのように取り繕われるか、あるいは無視されます。
 どんなに偏差値が高かろうと低かろうと、受験する思いは同じであり、合格した喜びに何の違いもありません。合格した学校によって活字の大きさが変わったり、トップ校合格者のみを写真入りで宣伝する広告には差別感が漂い、感じの良いものとは思えません。

 いよいよ新年度が始まりました。当教室では受験生とご家庭からのご要望をしっかりと伺い、そのご要望をくみ取り、場合によってはアドバイスを挟みながら受験指導を続けていきたいと思います。そして、来春もまた、受験生全員のご家庭から満足していただける結果を導けるよう、努力する所存でおります。