Daily Archives: 2017年8月23日

聞き上手と聞き下手

 算数の授業風景を連想してください。教師が「辺ABと辺BCが等しい。つまり、こことここが等しいから・・・」と黒板に書いた図と式を指で示して説明しているとき、一心不乱にノートに図を写している生徒と、えんぴつを持たずじっと説明を聞いている2人の生徒がいたとします。どちらの生徒が聞き上手と言えるでしょう。
 言うまでもなく、じっと説明を聞いている生徒です。板書したものをノートに記入することに熱中してしまっている生徒は、教師が「こことここ」と言っても、「どことどこ」なのか分かりません。その結果、今日の授業はどんな内容だったのかを理解できないまま、1時間を終えてしまうのです。
 一般に、よほどの達人でなければ、ノートをとりながら教師の話を理解することは困難です。以前、この稿に登場していただいた故遠藤周作氏が某女子大で講義を行い、その後学生のノートをのぞいてみると、まるで速記者のようにびっしりとノートが埋められていたそうです。その中に「ごほん」という言葉が入っていたので、遠藤氏がその学生に聞くと、氏が咳をした音だとのことだったそうです。要するに、写すだけ写して、その中身はさっぱり理解していないということです。
 このように、大学生でさえ筆記しながら聞いて理解することは難しい作業なのです。まして、小学生や中学生に出来ることではありません。にもかかわらず、授業内容をノートにとることがまるで美徳であるかのごとく、多くの生徒がどうでもいいことまでせっせと黒板のものを写しているのが実情です。聞き上手であるとは言えません。
 私の算数の授業では、説明中は生徒にえんぴつを持たせません。とにかく黒板に集中させ、説明の内容を理解してもらうことをこころがけています。そのかわり、説明が終わったあと、ノートをとる時間を与えるようにしています。
 小中学生のうちは、一つのことに集中させることが大切だと私は思っています。その意味では、音楽を聴きながら、おやつを食べながら、鼻唄を歌いながらの、いわゆる「ながら勉強」には賛成できません。「聞くときは聞く!」、「ノートに写すときは写す!」。集中力を培う意味でも、このことを生徒に奨励しています。